【もうすぐ100冊】今年の絶賛本5選【2025年の読書】
まったく大したことはないのだが、どうしても個人的絶賛本を発表する場が欲しく勢いで当ブログを新設した。
ここ数年間、年間100冊読了を目標に掲げている。2025年11月2日現在ちまちまつけている読書ログには「95冊」記録している。今年も目標まであと少しだ。年末まで残すところあと2ヶ月と、少しばかり気が早いが、さっそく紹介しよう。
【目次】
⒈ マザーアウトロウ(金原ひとみ)
⒉ 逃亡するガール(山内マリコ)
⒊ 本の読み方 スロー・リーティングの実践(平野啓一郎)
⒋ エヴリシング・フロウズ(津村記久子)、の解説
⒌ 耳に棲むもの(小川洋子)
⒈ マザーアウトロウ(金原ひとみ)

【書名】マザーアウトロウ
【著者】金原ひとみ
【出版社】U-NEXT
【ページ数】182p
【一番心に残った〇〇】
タイトル!Mother-in-law(婚姻による義理の母)↔︎Mother-out-law(造語;たぶん婚姻による義理の母娘の関係ではなく、個人対個人で結ぶ関係を指す)とMother Outlaw(造語;「アウトローな母親」=母親という立場に縛られず好きに生きる張子と、母親になることをやめる波那)を掛けている。と思う。
【感想】
金原ひとみの小説には《痛快》という言葉がよく似合う。軽やかでポップな文体で、一見、「世間体に縛られない自由でクレイジーな人たち」が好き勝手に生き散らす…のだが、後から読者はズシンと思い何かにぶん殴られて目を覚ます。人は見かけでは判断してはいけない。主人公を「いま」の生活・考え方だけで知った気になってはいけない。誰しも傷があり、過去があり、そう簡単に打ち明けてはくれない悩みやトラウマがある。でも、私たちは、自由を選べるのだ。
⒉ 逃亡するガール(山内マリコ)

【書名】逃亡するガール
【著者】山内マリコ
【出版社】U-NEXT
【ページ数】132p
【一番心に残った〇〇】
物語冒頭のJK二人の会話。
「あーまじむり、スタバで盗撮なんてほんと最悪」
「そうだよ、スタバでやんなよ、クソが。スタバはマックじゃないんだよ」(13p)
【感想】
まさかまさかの舞台が富山市内でビックリ。Go for Kogeiで観光したスポットがたくさん出てきて楽しかった(例のスタバとか。笑)ローカル感も良かったけれど、この作品の何よりも素敵な点は女子高生二人のシスターフッドにあり、JK視点の文体やセリフにはリアリティが感じられて眩しかった。(まあ、これは30代女性の想像するJK,かもしれないけれど… curious what actual HS girls would think?)To be a girl in Japan is to be subjected to the male gaze. Gross.
⒊ 本の読み方 スロー・リーティングの実践(平野啓一郎)

【書名】本の読み方 スロー・リーティングの実践
【著者】平野啓一郎
【出版社】PHP
【ページ数】245p
【一番心に残った〇〇】
「時と場合によって、速読が求められることもあろうが、それは結局、読書ではなく、情報処理ではないか」(8p)と一刀両断する著者。
【感想】
平野氏の読書に対する並々ならぬ想いに触れて、いたく感動した。<自分の人生を、今日のこの瞬間までよりも、さらに豊かで、個性的なものにするための読書>の肯定に、共感する。読書を海外旅行に例える箇所があるのだが、なるほど、重要なのは「行ったかどうか」(=読んだかどうか)ではなく、「どれくらい堪能できたか」である。後半は名作文学の一場面を実際に「スロー・リーディング」(=熟読・精読)してみる構成になっているが、このパートも各作品の理解が深まって面白かった。
⒋ エヴリシング・フロウズ(津村記久子)、の解説

【書名】エヴリシング・フロウズ
【著者】津村記久子
【出版社】文藝春秋
【ページ数】398p
【一番心に残った〇〇】
次の場面の、突然の唐揚げのくだり。
「塾からは、だいたい一人で帰る。七割がたの生徒が同じ中学の連中なのだが、みんなだらだらしゃべりながら帰って、そのうえ自動販売機の傍で立ち話までしていたりするので、付き合っているとどんどん家での自分の時間が減っていく。誰かがひどく落ち込んでいたり、不安がっていたりする時は、塾の連中はなぜか吸い寄せられるように集まり、お互いを励ましあったりするから、それにはもちろん付き合うのだが、基本的には一人だった。さっさと帰る理由を訊かれると、必ず、眠いから、だとか、腹が減った、だとか、生理現象と絡めて答えるようにしていた。自分の時間が欲しい、は、男の中学生が提示する理由としてはあまりにナイーブだとヒロシはおもっていた。
その日は、家からは少し離れたコンビニに寄った。からあげを買って帰りたい、と思ったのだが、家から最も近いコンビニは、他のチェーンと比べて比較的惣菜の値段が高く、そのうえ量もないので、遠回りをして、ヒロシがそれなりに納得している量と価格の唐揚げを売ってくれるチェーンの店に入った。」(101p)
【感想】
シリアス寄りの津村記久子。中学生も複雑よなぁ。人間の悪意や、残酷な一面も描きつつ(ひどいウワサ、暴力、性的イタズラや虐待)困っている人がいたら助ける、というシンプルな善意を主人公が持ち合わせていることに希望を感じる。それしにしても、石川忠司とやら(「文芸評論家・東北芸術工科大学芸術学部文芸学科教授」らしい)による解説が見事に津村記久子作品の特徴を分析していて感心してしまった。「津村がシリアスなシーンを描くとき、それは必ずどこか阿保らしさへと転落していくかもしれない契機をはらむ」(394p)
⒌ 耳に棲むもの(小川洋子)

【書名】耳に棲むもの
【著者】小川洋子
【出版社】講談社
【ページ数】132p
【一番心に残った〇〇】
「降り注いでくる素粒子を受け止めるため」天井から無数のティースプーンをぶら下げている部屋の描写。
【感想】
小川洋子作品の好きなところがギュッと凝縮された一冊。新作なのにまるで古典のように感じられるクラシカルな空気感が大好きだ。『骨壷のカルテット』に出てくる、どんどん敷地が侵食されていく耳鼻咽喉科医院とか、『耳たぶに触れる』の涙の写真に五線紙を重ねて作曲する縦笛演奏家とか、『今日は小鳥の日』のジュウシマツを一匹ずつ口の中に押し込んで自殺する“小鳥ブローチの会”初代会長とか、『踊りましょうよ』に出てくるサービス付き高齢者向け住宅“ビレッジ・コクーン”の入居者の部屋の描写とか、全てが文学的意味に満ちていて、不思議で、素敵だった。